『私の家は山の向こう テレサ・テン十年目の真実』書評
■米原 万里(作家)
有田芳生著『私の家は山の向こう―テレサ・テン 十年目の真実』(文芸春秋、1857円)

 中華圏のスーパースタートウ麗君=テレサ・テン。10年前にタイで急死したその短いが波乱に満ちた生涯を丁寧で重層的な取材、抑制の効いた筆致で再構築した傑作。付録のCDに、天安門事件に対する抗議集会に駆けつけた彼女が披露した、本書のタイトルにもなった歌が収められている。日本で流行(はや)った彼女の歌に無関心だった私はこれを聞いて身震いした。台湾と本土に分断された国家の過酷な歴史と政治権力に翻弄(ほんろう)されながらも同胞と運命を共有することによって彼女はアーチストとしても人間としても成長し、その歌は引き裂かれた同胞たちを繋(つな)いでいる。

(「読売新聞」2005年8月7日)

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