釜ヶ崎の居酒屋で酒を煽るマルクス
ありむら潜『Hotel New 釜ヶ崎』(秋田書店)より。

 ソ連から解放されたマルクスは、難民として資本主義のどんづまり釜ヶ崎へとたどりつく。そこで見たものは『資本論』で予測した現実そのものだった。復活を期したマルクスは、いま釜ヶ崎で静養しているという。

 

 私が会社勤めを終えてフリーランスで原稿を書きはじめたのが1986年。金銭からもフリー(=不自由)となったわけである。それからの紆余曲折。「黒の舟歌」風にいえば、私なりに「極楽見えたこともありゃ、地獄が見えたこともある」。そんな「落ち込み」にあって先輩諸氏のきらめく言葉が支えとなってきた。オウム事件当時にお会いした藤田省三さんが、人生の機微を描くのが小説家の役割だと語ったとき、私はハッとした。誰にでも人生の機微がある。ただし、時間的なゆとりなどが理由で、それを文字に表現できる人はそう多くはないはずだ。だからこそ物書きは多くの人に代わって人生を書かなくてはならないというのだ。私はカルトや人物を書いてきたし、これからもそうするだろう。そんな生活を続けるなかで、依頼に応じてさまざまなことを書いてきた。ここに紹介するのはその断片である。

 

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